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リアルに考えよう

デフレも何もかもスマホのせい

最近,近くの大型ショッピングモール内の電器売り場に行って気付いたことがあります。以前は入り口から入ってすぐの一体は,デジカメやら,携帯音楽機器やら,日本の家電メーカーが得意とし,消費者が手にとって試したい,軽薄短小の新製品機器が並んでいました。もちろん携帯電話もそのすぐそばに。それが様子が一変していたのです。入り口近くの,一番,客に目に付き易い部分はすべてスマホ。デジカメや携帯音楽機器は,奥の,ごくわずかのスペースに押しやられていました。

さらにもう一つの最近の経験。最近,炊飯器が故障し,新品を購入することにしました。上記とは別の,有名大型電器量販店,365日営業だったお店に平日の夜,行ってみると,まさかの改装3日間の最中。改装が終わっていって見ると,広大な売り場の中で,電器売り場が大きく縮小し,食料品や雑貨品の棚が大幅に増えている。

明らかに電器業界が変化が起きていると直観しました。売るもの,売れるものが少なくなっているのです。なぜか?

私は,その理由は,スマホ,および携帯電話のせいではないかと思っています。今日のスマホの高性能,高洗練化の度合いは非常に高いものがあります。その計算パワーは,1970年代のスパコンを凌ぐほどです。そして,搭載されているカメラや,センサーの能力も素晴らしい。デジタル通信速度も,LTEの登場で,無線LAN並みになってきました。

スマホが素晴らしいのは,それが「コンピュータ」であることです。真のパーソナルコンピュータ。一人一台を前提とし,インターネットというオープンなネットワークに高速接続している。そして,中の機能はソフトウェア実装されており,どんどん新しい機能が増えて,バージョンアップもされていく。機能の多さは無限といってもいい。新機種に買い替えなくとも,新しい機能がどんどん追加されていく。

スマホがあれば,デジカメがいらない,携帯音楽機器がいらない,電子辞書がいらない。パソコンも,ネット上の情報を閲覧するだけであればいらない。スマホがあれば,それでいい。

そう,スマホが多くの家電製品を「喰って」しまったのです。だから,電器製品売り場で,売るものがない,売れるものがない。

そしてさらに重要な事。デフレもスマホのせい。これだけデフレ,デフレと人々が叫び,色々な対策を打ってもデフレは止まらない。それは,一人一台,スマホか携帯電話を持つようになったから。一人一台のスマホを持つためには,一人一本のインターネット回線を必要とします。インターネット回線は一本当たり約5千円/月額を必要とします。携帯電話であれば,その通信料を抑制することができますが,スマホはパソコン並みのパケット通信消費をするため,天井価格に張り付きます。一家4人で,全員がスマホをもったら,月額2万円がスマホの維持にかかります。

デフレや不況の影響で,一家の収入は右肩下がり,しかし,スマホ&携帯だけでコンスタントに,月額2万円を払い続けなければなりません。家計を圧迫するなら止めればいい?いえ,簡単にはやめられません。携帯電話会社との契約上,1〜2年の長期契約がをしていることが一般的。しかも,スマホ&携帯は今や,深く人々の生活に浸透していて,家計が苦しいから回線契約をキャンセルしようということにはならない。スマホ&携帯は,あって当たり前なモノになってしまっているので,家計が苦しいならむしろ別の支出を減らす。食費,衣料費,家電買い替え等。

ではスマホ&携帯業界は空前の利益を上げているのでしょうか?日本のメーカーはノー。少なくなったパイの奪い合い。通信会社は?大手3社が激しく競い合い,薄利多売を競う世界。ではなぜ一人5千円も?

それは通信インフラの整備に当てられているから。通信インフラを一社が担うのであれば,より効率的だったでしょう。電気,水道,ガスがそう。大手通信会社3社が競い合う世界は,電信柱の3重に立てていることに相当。通信会社も,消費者も双方が消耗する世界。そして,通信インフラは高速タイプに更新していかなくてはなりません。現在は3GからLTEに更新中。全国に張り巡らせているから膨大な費用を要します。

しかも通信インフラへの投資によって構築された設備は,それが新たな生産を生むという訳ではありません。消費者のコンテンツ閲覧として消費されていくだけ。

人々がパケット漬けにされた世界。ひたすら,消費・消耗していく世界。

よって,デフレも電器業界不況もスマホのせい。日本のお家芸だった電器業界の不況は,他の業種にも波及せざるを得ない。よって何もかもスマホのせい。