「聖女の救済」 (著 東野圭吾)
今期のTVドラマ「ガリレオ」の最終回は「聖女の救済」,2週連続,最終日は30分拡大。助演女優は天海祐希。出来は悪くなかったのですが,見終わった後に,ちょっと違和感が残りました。
トリックはなかなか素晴らしいのですが,使った毒薬を警察の鑑識が本当に検出できなかったのか?また殺人の動機は,これほどの執念を掛けるほどのものだったのか?
原作の本,「積ん読」になっていましたので,気になって,読んでみました。
トリックそのものは比較的シンプルなのですが,トリックを成立させるための前提に,前代未聞と言っても過言でない仕掛けが施してあります。つまりシンプルなトリックと,手の込んだ前提。この二つを成立させて,ミステリー作品として成立させるためには緻密な設定が必要。
著者,東野圭吾はやはりさすがでした。冒頭から最後まで,緻密に,そして不自然さができるだけないように組み立てられていました。そして後になって気付きましたが,叙述トリックも使用。
TVドラマ版は時間制約のためか,犯人の行動,思考を理解する上で必要な部分がかなり省略されていました。毒物の入手経路も。その省略された部分の中に,犯人の執念の醸成と,本作品を第一級のミステリー作品にしている仕掛けが織り込まれています。
毒物検出も,スプリング8という実験物理の大型設備まで使って,徹底的に,大がかりに行われています。
読み終わった後,犯人と作者の双方に,ここまでやるのかという感慨が残ります。
TVドラマを観た人にも,観てない人にもお薦めできる作品です。
- 作者: 東野 圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/04/10
- メディア: ペーパーバック
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