生命とは何か
最近,共同研究を始めた池上高志先生(東京大学)の影響もあって,生命とは何かと言うことを考えるようになった。関連文献を眺め始めて,かの著名物理学者,シュレーディンガーが「生命とは何か」という本を著し,そこで,彼が「生物は負のエントロピーを食べている」という表現で,生命現象とは,放っておけば増大するエントロピーを,負の方向に向かわせる現象と表現していることを知った。
- 作者: シュレーディンガー,Erwin Schr¨odinger,岡小天,鎮目恭夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/05/16
- メディア: 文庫
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最初この表現を見たときにピンとこなかったが,しばらく考えてみると分かってきた。確かにそうだ。われわれが直感的に「生命」を感じるものは負のエントロピーを持っている。離散ではなく,集結。バラバラになっているのではなく,まとまっている。全体的統率力と部分的自発力の見事なるバランス。エントロピー増大の方向性の彼方にあるものは「滅び」であり,「滅び」に立ち向かうものが「生命」である。
例えば私達は,植物の葉一枚にすら,見事までの統率力と自発力の見事なるバランスを感じることができる。
人間は,砂利や地層の中から「化石」を見つけ出すことができる。ただの石とは違う何か,生命の痕跡をそこに感じる認識力が私達の中にある。かつては生命力によって統率制御されていたエネルギー。
人工物はしばしば幾何的であり,人工物そのものから生命は感じないかもしれない。しかし,人工物は強力な負のエントロピー(統率力)をもっており,その人工物を作り出した「人為」を私達は感じ取る。その人為を為した「生命力」を感じ取ることができる。