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ノーベル賞を取りそうな研究を戦略的に支援できるか?

(今日(10/11)Twitterでつぶやいた内容をまとめました)

これからノーベル賞を取りそうな研究を国は戦略的に支援できるか?山中さんは支援されたトップの1人であろうが,その山中さんですら,危機感を感じ,マラソンして資金集めをしたほど。山中さんの危機感は,支援の永続性。永続性がないと有能なスタッフが出ていってしまい,研究は霧散する。

まだ無名の(つまり普通の)研究者だけど,いずれノーベル賞を取りそうな人を国は戦略的に支援できるか?これは非常に難しい。たとえば,近い将来,あるいは遠い将来,芥川賞を取りそうな人を見つけて支援できるか?仮に芥川賞が高齢受賞もあるとして。

ノーベル賞のこだわりはオリジナリティ。オリジナリティを求めよということは,珍しいものを見つけ出せということと似ていて,リスクを伴う。芥川賞もおそらくそうで,オリジナリティ溢れる何かを審査員は探している。人とは違う道を行くことはリスキーだ。

だから芥川賞を狙って文章を書き続けることは,それはリスクを伴う行為と言ってもいい。珍しいものは,見つかるかもしれないけど,見つからない可能性もとても高いから。宝探しと同じ。

小説を書く人は,芥川賞を取りたいために,小説を書くのか?おそらく芥川賞はモチベーションの一つに過ぎない。取れたら嬉しいけど考えないでおこう,みたいな。最大のモチベーションはおそらく,書きたいから。それは楽しみであり,七転八倒の苦しみでもあるが,ああ書きたいと思う心が内にある。

研究も同じ。ノーベル賞,取れたら嬉しい。でもそれはモチベーションの一つに過ぎない。見つけたいものがあるから,研究する。自分にとっての宝。あるいは,それを見つければ,すごいねと周りが言ってくれるような宝を見つけたいと思う素朴な心。

山中さんの場合。彼は最初,臨床医だったが,自分の力や医学の力では救えない患者を目の当たりにした。別のアプローチでやってみよう。そして彼は基礎研究の世界に飛び込んだ。患者を救いたいという医師の思いは変えることなく。多くの理学的研究者とはすこし違う。むしろ,工学的だ。

宝を見つけたい。人を羨ますことによって満足を得るような宝ではない。独り占めできるようなものではない。持っていることで,自分が心底満足できるような宝。他人とも共有できるような宝。願わくは,見つけた事で,他人も喜んでくれるような宝。研究,学問,芸術とはそういう宝を探すこと。

さて,どうしたらそういう宝探しを支援できるのか?いつか宝を掘り当てる人を事前に見つけることは非常に困難だ。できることは,宝探しができるような土壌,環境を作ること。名もなき(つまり普通の)研究者でもチャレンジできる環境を作ること。

良い線を行きそうになってきたけれど,リスクを持ってさらに進んでいこうとするチャレンジャーを暖かく後押ししてあげられること。そういうように支援するしかないと思います,宝探しは。

宝探しは,失敗するのが当たり前。成功する方が珍しい。始めたからには,失敗しないでね,では,開拓者の世界は栄えません。10回チャレンジして1回成功するかしないか。成功すればめっけもの。

成功したらすごく褒めて上げれば良いし,成功しなかったら,そんなの当たり前だよ,クヨクヨすることないよ,また今度チャレンジしようね,いつか成功するかもしれないから,と言ってあげたい。