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「組み合わせ」よりも「すり合わせ」か

「すり合わせ」と「組み合わせ」。日本の自動車に代表されるように,日本は「すり合わせ」が得意であり,米国は「組み合わせ」が得意と言われてきました。

しかし,「組み合わせ」をやりやすいIT業界においても,米国にせよ,日本にせよ,「組み合わせ」よりも「すり合わせ」が生き残るという傾向が,部品のハイレベル化が進んだ現在,顕著になってきたようです。

「すり合わせ型」から「組み合わせ型」にシフトしてしまうと製造,設計の敷居が下がるので,競争は激烈,熾烈になります。そしてしばしば価格競争になります。その良い例がPCです。携帯電話やスマホもそうです。ベンダー側の差別化が難しくなる。

これまでの様子を見てみると,「すり合わせ型」が生き残っているのが面白いところです。IBMは早めにPCを売却しました。しかし,「すり合わせ」が大切なメインフレームは売りません。

アップルのMac, iPod, iPhone, iPadの強みはハードとソフトの「すり合わせ」の妙。

Googleは,自分のサービス自体は,他のサービスにマッシュアップされて,サービスという高水準の「部品」となることを推奨していますが,グーグル自体が提供する個々のサービスは「すり合わせ」の妙で出来ています。そして,Googleが自社データセンター内に作り込んだ「部品」は外に出さない。「部品」の集合を外部に売りまくるビジネス形態のマイクロソフトと対照的。

Facebookに至っては,マッシュアップすら許さず,単にFacebookへの「いいね」ポインタ,Facebookからのリンクのみで,ほぼ外界サービスとつながっています。

IT関連でほぼ世界的なシェアの上位独占に成功している中級以上のデジタルカメラ(一眼レフ,ミラーレス)は,すり合わせの妙。初級レベルのデジタルカメラは「組み合わせ」で済んでしまうし,携帯電話搭載カメラと競わねばならないので,世界的シェアをとることも難しいし,大きな利益を上げることも難しい。

よいデファクトスタンダードがある部品はそれを使い,ない部品は新たに作り出すという戦略を創業時からとったサンマイクロシステムズは,それまでにはない,新たなよい部品(NFSに始まりJavaまで)を作り出せているうちは良かったが,Java以降は,新たな部品を作り出すのが容易でなくなり,最後は「すり合わせ」技術をデータベースシステムに一点集中したオラクルに買収されました。

こうやって事例を見てみると,他に真似ができない,太刀打ちができないレベルの作り込み技術を持っているところが強いようです。そして,そういう作り込み技術は,しばしば,「すり合わせ」によって,商品やサービスの「全体最適化」を行うことに成功しているようです。これは特に最近見られる現象ではなくて,伝統的に「匠」と呼ばれる人たちがやってきたこと。一朝一夕にできるものではなく,長く厳しい鍛錬,絶え間ない,終わりのない技の磨き上げがあってこそできるものです。

太く短く生きるならば,組み合わせでさっと儲けて,売り抜ける。細くとも長く生きたいのならば,他に真似の出来ない「匠」の道を行く。二つの道があるのかもしれません。