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米国IT業界,ポジティブ・フィードバックのエコサイクル

Evernote、iPadの手描きアプリのベストセラー、Penultimateを買収(TechCrunch,2012/5/8)

最近7000万ドルの資金調達ラウンドを完了したEvernoteだが、さっそくその資金の効果的な使い道を見つけたようだ。今日(米国時間5/7)、EvenoteはiPad向けデジタル手描きアプリのPenultimate〔ペナルティメット〕を買収したことを発表した。

米国IT業界の,ポジティブがポジティブを呼ぶ,活力あるポジティブフィードバック。上記Evernoteの例はそのほんの一例。

良いものを作って成功すれば,報われる可能性があるという,未来への期待。これはいつ始まったのかと記憶を辿ってみると,マイクロソフト以降であろうか。

ビル・ゲイツは,手にした資本の使い道を,他社・他ソフトの買収に使い始めた。そして自分が巨人IBMを打ち負かしたように,次は自分が打ち負かされることに怯え,「芽を摘む」ためにも積極的な買収に勤しんだ。そもそも,それまでOS作りの経験がないマイクロソフトがOS作りのきっかけになった初期のOS,MS-DOS自体が,他社買収によって得たもの。現在のプレゼンソフトの代名詞,PowerPointもそう。

この傾向はグーグルにも見られる。最近の良い例がアンドロイド。OS作りの経験がないが,スマートフォン世界での検索・広告分野への進出が必須と判断し,「買う」ところから始めた。

IBMは,Windows vs. OS2の戦いに敗れ,そして一時期の苦境を乗り越えると,ソフトウェア作りは控え,上方にシフトしてサービス提供に舵を切った。ソフトの内製は抑え,むしろ成功したもの,堅実となったものを買うことで,リスク回避をし,総合経費を切り下げることにした。

Win-Winの関係になると思えば,買収が成立。どちらかがまだ,もしくは嫌と思えば不成立。米国IT業界がハイレベルな競争の中,「進化」の過程で作り出した「エコサイクル」。