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入試システムは「野蛮」ではない

下記はBizCOLLEGE PREMIUM(日経BP社)による記事「〜創造する力〜 偶有性の時代の仕事術」(2012年9月8日実施)」における茂木健一郎氏の発言概要の引用です。

ここで茂木氏は、オブジェクト指向スクリプト言語Ruby」を開発したまつもとゆきひろ氏を例に出し解説した。「まつもとさんが高校3年生のとき、数学の成績は10段階で1だったそうです。筑波大学が入学を許可してくれましたが、普通にペーパーテストで評価したら1ではさすがに入学できない。しかし、まつもとさんはRubyを作りました」


まつもとさんは、高校の時に父親が買ってきたラジオ雑誌の、プログラム言語の仕様書を見てプログラム言語を学んだ。「要するに、プログラミング言語のオタク。ピンポイントにそこが得意なんです」。


茂木氏によると、これは人間の脳のモジュール性に関係しているという。脳の回路が人によって異なるため、得意不得意が違う。「日本の標準的なテストを全員に課して、そのスコアの高い順に入れるということが、いかに野蛮な制度かを実感してもらいたい」。

まつもとさんが入学した当時の筑波大学 情報学類(現在の情報科学類)は,通常のペーパーテスト入試と推薦入試の二本立てだったはずです。いずれの入試でも,お目こぼしはありえず,公平な基準で総合的に評価され,合格しているのです。

現在の情報科学類は,AC (Admission Center)入試という,受験生の問題発見・解決能力を重視する入試も実施し,まつもとさんが受験した時代よりさらに進化を遂げています.

また,どんな特技があろうが,どんな入試で入ろうが,入学以降は全く区別なく,期末評価・単位認定が行われます。たとえ彼がどんなに数学が不得意だったにせよ,少なくとも必修科目の数学科目を履修し,期末試験を受け,正当な基準で評価され,卒業判定をパスして卒業しているのです。

大学側は,私が知る限り,入試システムとカリキュラムの改善にたゆまぬ努力を続けており,「完璧」ではないでしょうが,「野蛮」ということはありません。

それから,情報学類(情報科学類)およびそれに関係する情報関連大学院には,まつもとさんに匹敵する可能性を秘めたソフトウェア・クリエータは,ごろごろとは言いませんが,少なからず,輩出しているし,在籍もしています。「世界のRuby」を作ったまつもとさんは,現在,一番大きなスポットライトが当たっているクリエータなのだと理解しています。